
この記事でわかること
- 2022年のロシアによるウクライナ侵攻で欧州のエネルギー調達が混乱し、国際価格が上昇した
- 日本はエネルギーの大半を輸入に頼っており、円安が重なって輸入コストが膨らんだ
- 家庭では省エネ機器の活用や料金プランの確認が選択肢になるが、効果は家庭ごとに異なる
電気代・ガス代はなぜ上がったのか
2022年は、日本の家庭で電気代・ガス代・ガソリン代がいずれも上昇しました。総務省の消費者物価指数では、2022年平均の全国の「光熱・水道」は、前年に比べ14.8%上昇しました。
これは価格指数の変化であり、すべての家庭の請求額が14.8%増えたことを示すものではありません。個別の家庭の増減は、使用量や料金プランによって異なります。
この記事は2022〜2023年の価格高騰を整理したもので、現在の価格や制度を示すものではありません。2022〜2023年のエネルギー価格の高騰は、世界的なエネルギー情勢の変化を背景にしています。なぜここまで上がったのか、背景を整理します。
日本のエネルギー事情:輸入依存の高さ
まず前提として、日本はエネルギー自給率が非常に低い国です。
資源エネルギー庁によると、日本のエネルギー自給率は2022年度に12.6%です(2023年度は15.3%、IEAベース)。同庁は、「すぐに使える資源に乏しい日本では、そのほとんどを輸入に頼っています」と説明しています。
国際的なエネルギー価格が上がると、日本の電力・ガス・ガソリンの価格は影響を受けやすい構造です。ただし、エネルギー白書2023は、日本の価格の上昇幅は欧州より小さかったと説明しています。
高騰の3つの背景
1. ロシアによるウクライナ侵攻(2022年2月〜)
ロシアは世界有数の天然ガス・原油の産出国です。エネルギー白書2023によると、2020年のロシアの世界シェアは、天然ガスが17%で世界第2位、原油が12%で世界第3位でした。2022年2月のウクライナ侵攻後、欧米を中心にロシアへの大規模な経済制裁が行われ、ロシア産エネルギーからの脱却が進められました。
ロシアへの依存度が高かった欧州が代替調達先を世界中に求めたため、LNG(液化天然ガス)の国際価格が急騰しました。エネルギー白書2023は、アジア諸国もその影響を受けたと説明しています。なお、原油や天然ガスの価格は、侵攻より前の2021年から上昇し始めていました。
2. 円安の加速
2022年以降、円安が急速に進行しました。日本銀行の統計では、東京市場のドル・円の2022年10月の月中最高値は1ドル=150.48円でした。
円安が進むと、同じ量の燃料を輸入するのにより多くの円が必要になります。資源エネルギー庁の白書2024の解説は、燃料価格の高騰と円安が重なり、石油や石炭などの化石燃料の輸入額が2年間で22兆円以上増えたと説明しています。
3. コロナ後の需要回復と上流投資の減少
エネルギー白書2023は、2021年の時点で、新型コロナ禍からの経済回復や寒波によるエネルギー需要の増加に、LNGプラントのトラブルなども重なり、需給がひっ迫していたと説明しています。また、2015年のパリ協定を契機に、化石エネルギーの政策や需要動向が不透明になったことを受け、上流部門(ガス田や油田)への投資が大きく減少し続けていることも、供給力不足の一因として挙げています。
白書によると、ドイツの天然ガスの輸入物価は2022年9月に2020年1月比で約10倍(981)まで上がりました。日本の上昇幅は欧州より小さく、その理由として、ロシア産エネルギーへの依存度が低かったことや、LNGの多くを長期契約・油価連動で調達していたこと、燃料費調整制度があったことが挙げられています。
家計への影響:どの費用が増えたのか
| 費目 | 影響の経緯 |
|---|---|
| 電気代 | 火力発電(LNG・石炭・石油)の燃料費が上がり発電コストが増加 |
| 都市ガス代 | LNGなどの原料価格上昇が料金に影響 |
| ガソリン代 | 原油価格上昇。政府補助金(激変緩和措置)でやや抑制 |
2022年は、光熱・水道や食料品などが上昇し、総務省の消費者物価指数(総合)は2022年平均で前年比2.5%上昇しました。
政府の対策(補助金・激変緩和措置)
日本政府は、エネルギー価格の急激な上昇を緩和するために各種補助策を導入しました。
- 電気・ガス価格激変緩和対策(2023年1月使用分〜):電気・都市ガスの小売事業者を通じた値引き。令和5年1月使用分から9月使用分まで実施され、その後も継続されました
- 燃料油価格激変緩和対策(2022年1月〜):元売事業者等への支給でガソリンなどの価格上昇を抑制
- 住民税非課税世帯等への給付金(電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金、2022年度)
これらの補助は、期間を区切って実施されたものです。
家庭でできる対策の例
| 対策 | 資源エネルギー庁などの資料にある数値・説明 |
|---|---|
| 電力会社・料金プランの見直し | 契約内容や使い方によって料金が変わる。効果は家庭ごとに異なる |
| エアコンのフィルター掃除 | 資源エネルギー庁は、目詰まりした2.2kWのエアコンと比べ、月1〜2回の清掃で年間約32kWh(電気代約990円)の省エネと試算している。電気料金は1kWhあたり31円(2022年7月の目安単価)で換算 |
| LED照明への切り替え | 資源エネルギー庁は、電球形LEDランプは白熱電球と比べて約86%の省エネとしている。54Wの白熱電球を7.5Wの電球形LEDランプに替えた例(年2,000時間使用)では、年約93kWh、約2,883円の節約と試算している |
| 太陽光パネルの設置 | 初期費用は大きく、効果は設置条件や電気の使い方による |
上の数値は資源エネルギー庁の試算で、機器・使用時間・電気料金の単価などの条件が項目ごとに異なるため、効果の大小は比べられません。給湯器や冷蔵庫などの省エネ効果は、機器の説明書や資源エネルギー庁の案内で確認してください。
まとめ
- ロシアのウクライナ侵攻によるLNG価格高騰と円安は、日本のエネルギー価格上昇の主な要因の一つ
- 日本はエネルギーの大半を輸入に頼る構造(自給率は2022年度に12.6%)のため、国際価格変動の影響が大きい
- 政府の補助策は期間を区切った緩和策で、資源エネルギー庁は、エネルギーの大半を海外に頼る構造が続く限り、価格高騰のリスクにさらされ続けると説明している
- 家庭では、料金プランの確認や省エネ機器の活用が選択肢になる。効果は家庭ごとに異なる
よくある質問
Q. 補助金が終わると請求は一気に上がりますか? A. 制度・契約内容によります。終了時期と新料金を電力会社・自治体の案内で確認してください。
Q. オール電化は得ですか? A. 光熱費の内訳・設備費・地域の気候で変わります。一概に得とは言えません。
Q. 今すぐできる一番効く対策は? A. 効果は家庭ごとに異なります。契約内容、使い方、設備を確認して判断してください。
参考資料・出典
- 資源エネルギー庁「エネルギー白書2023」第1部第2章第1節:価格高騰の要因(需給ひっ迫、侵略、供給障害、上流投資の減少)、天然ガスの輸入物価、ロシアの世界シェア。
- 資源エネルギー庁「エネルギー白書2024」解説:燃料価格高騰と円安による化石燃料の輸入額の増加、2022年度のエネルギー自給率12.6%。
- 資源エネルギー庁「2024―日本が抱えているエネルギー問題(前編)」:「そのほとんどを輸入に頼っている」、2023年度の自給率15.3%(IEAベース)。
- 資源エネルギー庁「エネルギー白書2022」第3部第5章第2節:燃料油価格激変緩和事業(2022年1月27日に支給開始)。
- 総務省統計局「2022年(令和4年)平均消費者物価指数の動向」(e-Stat、PDF):2022年平均の総合前年比2.5%、全国の光熱・水道は前年比14.8%の上昇。
- 経済産業省「電気・ガス価格激変緩和対策の継続に伴う特例認可」(2023年9月20日):令和5年1月使用分から9月使用分までの値引きと、その継続。
- 内閣府「電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金について」:低所得世帯(住民税非課税世帯等)への給付金。
- 日本銀行「主要時系列統計データ表」為替相場(東京インターバンク相場・月次):東京市場ドル・円スポットの月中最高値(2022年10月は150.48円)。
- 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト「空調」・「照明」・「機器の買換で省エネ節約」・「算出根拠(金額換算係数)」:フィルター清掃・LED照明の試算と電気料金の換算単価(31円/kWh)。
