食べ物・栄養約5分で読めます

【トマト】赤くならないのはなぜ?高温で起こる着色不良(黄変果)と、その他の高温障害

トマトの高温障害には、花粉の働きが落ちる着果不良(開花期)、果実が色づきにくくなる黄変果(果実肥大期)、裂果や日焼け果などがあります。農林水産省の速報と、農研機構の整理(施設栽培)をもとに、障害を生育段階ごとに分けて解説します。

【トマト】赤くならないのはなぜ?高温で起こる着色不良(黄変果)と、その他の高温障害

この記事でわかること

  • 高温によるトマトの障害は、開花期・果実肥大期などの段階で種類が異なる
  • 赤くならない原因は高温だけとは限らず、品種による違いもある(農研機構の整理)
  • 2025年の影響割合は果実の割合ではなく作付面積ベースの数字

トマトは赤い野菜という印象がありますが、店頭で赤みの薄い実を見かけることがあります。花が咲く、実がつく、果実が大きくなる、色づくという段階ごとに、高温の影響が現れます。

農林水産省の調査では、2025年夏の高温によってトマトの着花・着果不良が見られた地域がありました。トマトの高温障害は「赤くならない」だけでなく、裂果、小玉化、黄変果などにも広がります。

果実の色づきと温度

農研機構の整理(施設栽培)では、12℃以下や32℃以上ではリコピンの生合成が阻害され、黄変果が起きるとされています。

ただし、赤みが薄いことだけで、原因を高温と決めることはできません。まず、そのトマトがどの品種で、どの生育段階にあるかを分けて考える必要があります。

高温は花と実の両方に影響する

トマトは、花粉が働いて受粉し、果実がつくられます。農研機構の整理(施設栽培)では、30〜40℃で花粉の稔性と受粉率が低下し、35℃以上では胚珠の形成不良も起こり、着果不良が起きる可能性があるとされています。実ができなければ、その後の着色や収穫量以前の段階で影響が出ます。

実がついた後も、高温によって果実の成長や成熟のバランスが変わります。農研機構の整理では、着色不良、小玉化、裂果、尻腐れ果、黄変果などは、発生する時期や仕組みが異なります。高温障害を一つの症状にまとめると、花の問題と果実の問題を混同してしまいます。

2025年の影響割合をどう読むか

農林水産省の報道発表(2026年3月27日、令和7年地球温暖化影響調査レポート(速報))は、2025年夏の高温について、作付面積を基準にした全国の着花・着果不良の発生割合を4〜5割、西日本では5〜6割と報告しています(速報であり、確報ではありません。2026年の割合ではありません)。

これは、全国のトマトの4〜5割に着花・着果不良が出たという意味ではありません。速報では、都道府県が影響の有無を作付面積を基準に調査して算出した割合で、実際の収穫量や果実の割合とは異なります。

産地で行われる高温対策

農林水産省の資料では、細霧冷房、遮光、換気、屋根散水、夜間の冷却、適切なかん水、品種の導入などが対策として挙げられています。産地で効果が確認された対策として、ほかに適正な樹勢管理や訪花昆虫の活用、根圏環境の改善などが挙げられています。なお、令和7年の速報では、最も効果があったと都道府県が報告した対策は遮光(遮熱)資材の設置が最多でした。

農研機構(施設栽培、2025年8月時点)が整理した障害と対策の例です。

生育段階高温で起きる可能性産地で検討される対策の例
開花期着果不良(30〜40℃で花粉稔性・受粉率が低下)昇温抑制、遮光遮熱、高温着果性に優れた品種
果実肥大期黄変果(12℃以下・32℃以上でリコピン生合成が阻害されるとの整理)、裂果、日焼け果黄変しにくい品種、遮光遮熱、昇温抑制、灌水方法
全ステージ小玉化・落果(最高気温の平均30℃以上)、尻腐れ(カルシウムの転流不良・供給不足、灌水不足)遮光遮熱、昇温抑制、灌水不足の回避

これらは産地での栽培管理の例であり、家庭菜園で薬剤を使う手順を案内するものではありません。品種や施設の条件が異なるため、一つの方法を全国共通の正解とすることもできません。

赤くならないトマトは、全て高温障害である。

この理解も正確ではありません。農研機構の整理では、黄変果は12℃以下でも32℃以上でも起こるとされ、品種による差もあります。見た目だけで原因を特定することはできません。

まとめ

トマトの高温障害には、花粉の働きが落ちる着果不良(開花期)、果実が色づきにくくなる黄変果(果実肥大期)、裂果や日焼け果などがあります。2025年の高温では、着花・着果不良(全国)、裂果・日焼け果・生育不良(西日本中心)が報告されています。

高温障害を読むときは、花が咲く段階、果実が大きくなる段階、全期間にわたる障害を分けることが大切です。影響割合も、果実の割合ではなく作付面積ベースの数字かどうかを確認します。

よくある質問

Q. 赤い品種なのに赤くならないのは高温だけが原因ですか?
A. 高温は一因ですが、品種などによる違いもあります。農研機構の整理では、12℃以下や32℃以上の気温でリコピンの合成が妨げられるとされています。見た目だけで原因を一つに決めることはできません。

Q. 高温になるとトマトは必ず小さくなりますか?
A. 小玉化が起きる可能性はあります。農研機構の整理では、最高気温の平均が30℃以上になると落果や小玉化が懸念されるとされていますが、必ず起きるわけではありません。

Q. 着花不良と着色不良は同じですか?
A. 同じではありません。着花不良は花がつく段階、着色不良は果実が色づく段階の問題です。生育段階を分けて考えます。

参考資料・出典