
この記事でわかること
- 白未熟粒はデンプンの詰まり方が不十分になり白く濁って見える現象
- 2025年夏は1898年の統計開始以降で最も高温。令和7年の速報では、作付面積を基準にした全国の白未熟粒発生割合は3〜4割
- 作付面積を基準にした発生割合と、米粒そのものの割合は別の数字
米を研いでいると、透明感のある粒に混じって、白く濁った粒が見えることがあります。稲が穂を出した後の「登熟期」に高温などの影響を受け、米粒の内部にデンプンが十分に詰まらないまま成熟すると、白く濁って見えることがあります。
この現象は白未熟粒と呼ばれます。2025年夏は日本の平均気温が1898年の統計開始以降で最も高くなり、水稲でも高温による影響が報告されました。米不足や価格のニュースとは別に、米粒の中で何が起きているのかを見ていきます。
白未熟粒とは何か
稲の穂が現れて米粒が大きくなっていく期間を登熟期といいます(農林水産省)。この間に米粒の内部にデンプンが蓄えられます。順調に成熟した粒は、透明感があり、形や大きさがそろった整粒として扱われます(農林水産省)。
一方、登熟期に高温や日照不足などのストレスを受けると、デンプンの蓄積が十分に進まないことがあります。農研機構は、高温で登熟した米の背中側(背白粒)では、細胞内にデンプンが十分に貯まらず、デンプン粒の間にできた隙間を光が通るとき乱反射するため白く濁って見える、と説明しています。白未熟粒は、炊飯後の白さではなく、白く濁って見える玄米を指す言葉です(農林水産省)。
高温で白く見えやすくなる理由
出穂後約20日間の平均気温が26〜27℃以上になると白未熟粒の発生が増えることが、これまでの試験等から知られています(農林水産省の速報)。また、農林水産技術会議事務局の2012年の研究成果では、登熟期の高温でデンプン分解酵素のα-アミラーゼが活性化することが、白く濁る乳白粒の発生要因とされています。
ただし、気温だけで全てが決まるわけではありません。品種、田植え(移植)や出穂の時期、水管理、肥培管理、日照なども関係します。同じ地域でも田んぼの条件や品種が違えば、白未熟粒の出方が同じになるとは限りません。
2025年の数字は何を示しているのか
農林水産省の2026年3月の速報では、2025年夏の日本の平均気温偏差はプラス2.36度で、1898年以降で最も高かったとされています。農林水産省の令和7年の速報では、作付面積を基準にした全国の白未熟粒の発生割合を3〜4割と報告しています。
ここで注意したいのは、「全国の米粒の3〜4割が白くなった」という意味ではないことです。速報の注記によると、この割合は影響の有無を作付面積を基準に調べて算出したもので、実際の粒数や収穫量の割合とは異なります。ニュースの数字を読むときは、対象が地域なのか、作付面積なのか、米粒そのものなのかを確認する必要があります。
品種や栽培管理で差が出る
農林水産省は白未熟粒への対応として、高温耐性品種の導入、品種の熟期分散、移植時期の見直し、肥培管理、水管理などを挙げています。
2025年には高温耐性品種の作付面積が前年より4.2万ヘクタール増え、主食用米に占める割合が18.2%になったという速報もあります。これは農家が気温の変化に対応するための選択肢の一つです。
よくある誤解
高温だった年は、全国の米が同じように白くなる。
全国で同じように起きたとは限りません。品種、出穂時期、水田の状態、地域の気温が異なるため、発生の程度には差があります。農林水産省の速報は、西日本と東日本で発生の状況が異なることも示しています。
白未熟粒は、稲の生育中にデンプンが粒内に十分に詰まらないまま成熟した、白く濁って見える玄米の総称です(農林水産省)。この記事は、食品としての安全性の判断を扱いません。
まとめ
白未熟粒は、稲の登熟期に高温などの影響を受け、米粒の内部にデンプンが十分に詰まらないまま成熟して白く濁って見える現象です。2025年夏は1898年の統計開始以降で最も高い気温となりました。
ただし、作付面積を基準にした割合と米粒そのものの割合は違います。品種、水管理、肥培管理、出穂時期などの条件も関係するため、白い見た目だけから原因を断定しないことが大切です。
よくある質問
Q. 白未熟粒は高温だけで起こりますか?
A. 高温は主な要因ですが、日照、品種、生育時期、水田の管理なども関係します。一つの要因だけで全国の発生を説明することはできません。
Q. 高温耐性品種なら影響はなくなりますか?
A. 発生を抑える対策の一つとして、高温耐性品種の導入が農林水産省の速報で挙げられています。ほかに肥培管理や水管理などの対策も紹介されています。
参考資料・出典
- 農林水産省「令和7年地球温暖化影響調査レポート(速報)の公表」
- 農林水産省「令和7年地球温暖化影響調査レポート(速報)」(PDF、令和8年3月):作付面積を基準にした発生割合、出穂後約20日間の平均気温26〜27℃以上の知見。
- 農林水産省「気候変動に適応。新たなる挑戦」
- 農林水産省「1.水稲」
- 農研機構 九州沖縄農業研究センター「九沖農研ニュース No.62」(2019年):高温で登熟した米の背中側(背白粒)で光が乱反射する説明。
- 農林水産技術会議事務局「2012年 農林水産研究成果10大トピックス TOPIC1」:高温でのα-アミラーゼの活性化と乳白粒。
