
この記事でわかること
- カカオは主要産地の天候・病害と需給の変化に影響を受ける
- 年度平均の上昇と、年度内の価格下落は両立する
- カカオ相場、メーカーの出荷価格、店頭価格は異なる数字
原料が高くなる理由と、商品が高くなる理由
チョコレートの値上がりを「カカオの不作」で説明しても、原料の相場が何を示しているかまでは分かりません。収穫の状況、国際取引の価格、メーカーが示す商品価格は、別々に確認する必要があります。
この記事では2024〜2025年の国際資料と、日本のメーカーの2025年の発表を使って仕組みを整理します。記載した数字は、その資料の対象期間のもので、現在の価格や将来の価格を示すものではありません。
産地の天候と病害を切り離せない
JIRCASの2026年2月の解説は、西アフリカのカカオ生産について、気候や病害を安定生産に関わる課題として挙げています。雨が多ければよい、少なければ悪いと一方向には説明できません。
USDAの2025年3月のコートジボワールの報告は、2023/24年度の生産減少について、報道で約24%の減少が示されていると紹介しています。また、2024年9〜10月の雨と褐色腐敗病なども扱っています。生産減少の年度と、その後の雨の時期を混ぜると、原因の説明がずれてしまいます。
ここでの数値は同報告が紹介した報道に基づくもので、USDA独自の実測値と読み替えることはできません。予測値、報告された実績、対象年度を分けて読む必要があります。
年度平均が上がっても、途中で価格は下がり得る
国際ココア機関(ICCO)の2024/25年次報告では、同年度の指標価格の平均は1トン当たり6,612米ドルで、前年度より39%高かったとされています。
一方、同報告は、2024年末の供給懸念などによる上昇と、2025年に入ってからの需要の弱まりや供給見通し・在庫の変化に伴う下落も説明しています。年度全体の平均と、ある月から次の月への変化は別です。
「平均で前年より高い」と「年度の途中で下がった」は矛盾しません。 高騰の記事と下落の記事を比べるときは、対象期間と使っている指標を先に確認します。
カカオ豆からチョコレートへ
USDAの報告が説明する加工では、カカオ豆は発酵・乾燥した後、粉砕や圧搾などを経てカカオバター等になります。発酵を、輸送や輸出が終わった後に初めて行う工程として並べるのは適切ではありません。
また、原料の国際価格と、日本で販売されるチョコレートの価格は同じものではありません。メーカーの価格改定理由には、カカオ以外のコストも含まれます。
日本の価格改定の例をどう読むか
明治の2025年4月4日の発表は、原材料価格の高止まりに加え、製造・流通に関わるコスト上昇を理由に挙げています。チョコレート31品の改定は、同年6月1日出荷分から、出荷価格で約10〜36%という案内です。
これは同社の対象商品と出荷時点についての発表です。全てのチョコレートがその割合で値上がりした、あるいは全ての店で6月1日に価格が変わった、という意味ではありません。
| 数字の種類 | 示しているもの |
|---|---|
| ICCOの指標価格 | 国際的なカカオの価格指標。米ドル・トン単位 |
| メーカーの出荷価格 | 特定の商品群を出荷する際の価格改定 |
| 店頭価格 | その店舗で販売される商品の価格 |
原料相場の変化率をそのまま商品へ掛け算したり、相場が下がってから一定の月数で店頭価格も下がると決めたりすることはできません。
価格ニュースを確認する順序
- カカオの相場か、商品価格かを確認する。
- 年度平均、特定の日、出荷開始日のどれかを確認する。
- 生産の実績か、見通しか、他の報告の紹介かを確認する。
- カカオ以外の価格改定理由も読む。
この順序は本記事の読み方の整理です。投資判断や、将来の値上がり・値下がりを予測する手順ではありません。
よくある質問
Q. カカオが39%高くなったら、チョコレートも39%高くなりますか?
同じ数字ではありません。原料の年度平均と、個々の商品の価格改定を分けます。
Q. 価格が下がったという記事があれば、高騰は終わったのですか?
一時点の変化だけでは決められません。年度平均や供給・需要の状況、商品の価格が示す段階も確認します。
参考資料・出典
- JIRCAS「カカオ安定生産に向けた研究課題」(2026年2月):気候・病害などの研究課題の解説。
- ICCO:Annual Report 2024/25:Marketsの章、年度平均と年度中の価格変化。
- USDA:Côte d’Ivoire – Cocoa Sector Overview – 2025(2025年3月7日):生産・天候・病害と加工工程。生産減少の数値は報道の紹介。
- 明治「価格改定のお知らせ」(2025年4月4日):対象商品、出荷日、出荷価格改定率、理由。
