
この記事でわかること
- リフレーミングは出来事を変えるのではなく、出来事への解釈(フレーム)を変える技法
- 認知行動療法(CBT)が取り入れる「考えを問い直し、別の見方を考える」方法と近い考え方。最初に浮かんだ解釈に気づき、別の視点で見直す
- 「コップに水が半分」の例のように、同じ事実でも解釈が違うと感じ方が変わることがある
「考え方を変えれば楽になる」は本当か
「もっとポジティブに考えなよ」と言われても、ネガティブな思考がすぐ消えるわけではありません。
リフレーミング(Reframing)は「ポジティブに考えよう」という単純な励ましとは異なります。同じ出来事を「別の視点・枠組みから見直す」考え方の技法で、感情そのものを力技で変えようとするのではなく、解釈のフレームを見直すことで感じ方が変わる可能性を探します。
リフレーミングとは何か
「リフレーム(reframe)」は「枠(フレーム)を組み直す」という意味です。絵画の額縁を変えると、同じ絵でも全く違って見えることがあります。この記事では、出来事そのものと、それに対する解釈を分け、別の見方が成り立つかを考えます。
有名な例:コップの水
次の表は、同じ水の量に対する解釈の違いを示す、この記事の説明例です。感情欄は反応の例であり、誰でもその感情になるという意味ではありません。
| フレーム | 解釈 | 感情 |
|---|---|---|
| 「もう半分しかない」 | 損失・不安・焦り | 不満・焦燥感 |
| 「まだ半分も残っている」 | 余裕・感謝 | 安心・前向き |
コップの水の量は変わっていない。変わったのは解釈の枠組みだけです。
認知行動療法との関係
リフレーミングは、認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)で使われる、考えを問い直して別の見方を考える方法(認知再構成)と、近い考え方です。認知再構成は、CBTの中核的な戦略の一つとされています(APA Handbook of CBTの序論)。
CBT全体の効果については、Hofmannら(2012年)が、CBTに関するメタ分析269件を同定し、そのうち代表的な106件を検討して、不安障害、怒りのコントロールの問題、全般的なストレスなどで最も強い支持があると報告しています(要旨で確認、本文は未確認)。ただし、これはCBT全体の評価で、日常的な「リフレーミング」だけの効果を示したものではありません。
CBTでは、困っている状況が、考え・感情・行動にどのようにつながっているかを話し合い、別の見方や対処を一緒に探します(NHS)。
次の図は、この記事での簡略化した整理です。
出来事 → 自動思考(最初に浮かぶ解釈)→ 感情 → 行動
「自動思考(automatic thoughts)」は、困難な状況に直面したときにほぼ瞬時に浮かぶ考えです(APA Handbook of CBTの序論)。認知再構成では、治療者が、役に立たない考えに気づき、その妥当性を検討し、必要に応じて修正する手助けをします(同)。
自動思考の例
以下は、この記事が考えた例です。特定の分類に基づくものではありません。
| 考え方の例 | 具体例 |
|---|---|
| 全か無か思考 | 「完璧にできなかったから意味がない」 |
| 過度な一般化 | 「またミスした。自分はいつもそうだ」 |
| 心の読みすぎ | 「あの人は私のことを嫌いに違いない」 |
| 最悪化 | 「これが原因で仕事を失うかもしれない」 |
| 感情的推論 | 「不安を感じているから、きっとうまくいかない」 |
これらの自動思考に「それは本当にそうか?」と問いかけるところからリフレーミングが始まります。
実践方法:3ステップ
ここで示す手順は、この記事の考え方の整理であり、効果が確認された治療手順ではありません。
ステップ1:自動思考に気づく
ネガティブな感情が湧いたとき、「自分は今どんな解釈をしているか?」と立ち止まります。
例:プレゼンでミスをした → 「自分はダメだ」「みんなに馬鹿にされた」
ステップ2:別の視点を探す
その解釈以外に、どんな見方ができるかを考えます。最初は無理やり感があっても構いません。
- 「このミスで何を学んだか」
- 「友人が同じ状況なら、自分はどう声をかけるか」
- 「5年後、このことをどう振り返るか」
例:「次のプレゼンの前に準備すべき点が明確になった」
ステップ3:感情の変化を観察する
別の解釈を考えた後、気持ちがどうだったかを振り返ります。感情が変わったり、軽くなったりすることを、この手順の前提にはしません。
職場・日常での具体的な言い換え
以下は、考え方の整理を示すためにこの記事が作成した例です。治療効果を確認した手順ではありません。
| ネガティブなフレーム | リフレーミング後 |
|---|---|
| 「また残業…」 | 「この仕事をやり切る機会がある」 |
| 「クレームが来た」 | 「改善すべき点を教えてもらえた」 |
| 「緊張している」 | 「これは体が備えようとしている反応」 |
| 「子どもが言うことを聞かない」 | 「自分の意見を持てるようになっている」 |
| 「仕事を断られた」 | 「無理に引き受けさせずに済んだ」 |
リフレーミングの注意点
リフレーミングは万能ではありません。
- 客観的に見て本当に問題がある状況は、リフレーミングで誤魔化すのではなく行動で対処することが重要
- 緊張の言い換えについては、Jamiesonら(2010年)が、体の興奮を「助けになる反応」と考え直すよう伝えると、大学院入試の数学の成績が高かったと報告しています。ただし、数学だけで確認された結果で、広い場面に当てはまるとは限りません(要旨で確認、本文は未確認)
- 他者の感情をリフレーミングで否定しない
- この記事の例は、出来事と解釈を分けて考えるための整理であり、感情の変化や治療効果を保証するものではない
まとめ
- リフレーミングは出来事ではなく「解釈のフレーム(枠)」を変える技法
- 認知行動療法(CBT)の認知再構成と近い考え方。CBT全体の効果は多くの研究で整理されているが、日常のリフレーミング単独の効果は確認していない
- 自動思考(困難な状況でほぼ瞬時に浮かぶ考え)に気づき、別の視点を探す3ステップで整理できる
- 「ポジティブに考えよう」と強制せず、別の解釈が成り立つかを検討する作業
- 行動が必要な問題は、リフレーミングの代わりに行動で対処する
よくある質問
Q. リフレーミングは「ポジティブ思考」と同じですか? A. 近いですが、無理に明るく考えるのではなく、別の解釈が成り立つか検討する作業に重点があります。感情を否定しないのがポイントです。
参考資料・出典
- NHS「Cognitive behavioural therapy (CBT)」:CBTの面談の内容(考えを問い直し、別の見方を考えることを含む)。
- Wenzel, A.(編)Handbook of Cognitive Behavioral Therapy(APA)序論(出版社公開のサンプル章):認知再構成と自動思考の説明(序論のみ確認。書籍全体は未確認)。
- Hofmann, S. G. et al. (2012)「The Efficacy of Cognitive Behavioral Therapy: A Review of Meta-analyses」Cognitive Therapy and Research:CBTに関するメタ分析269件を同定し、代表的な106件を検討(要旨で確認。本文は未確認)。
- Jamieson, J. P. et al. (2010)「Turning the knots in your stomach into bows: Reappraising arousal improves performance on the GRE」Journal of Experimental Social Psychology:体の興奮の捉え直しと入試(GRE)数学の成績(要旨で確認。本文は未確認)。
