
この記事でわかること
- ゆっくり動くのは怠惰ではなく、栄養の低い葉で生きるための省エネ戦略と考えられている
- 毛の溝に藻が生えて緑がかり、樹冠で捕食者から目立ちにくくなるとされる(フタユビナマケモノ)
- 飼育下のミユビナマケモノ3頭の観察では、周囲の温度が高い日ほどよく食べた。寒さと消化の関係は、仮説の段階
「ナマケモノ」という名前が表す通り、彼らは1日の多くを木の上でゆっくり過ごします。でもその「怠惰な」生活は、実はエネルギーを節約するための生存戦略と考えられています。
この記事で紹介する数値は、種によって対象が異なります。睡眠時間(動物園)・代謝・毛の藻はフタユビナマケモノ(スミソニアン国立動物園)、野生の睡眠時間と、温度と食べる量・酸素消費の研究はミユビナマケモノ(Bradypus variegatus)が対象です。
生息地とライフスタイル
フタユビナマケモノは、中央アメリカと南アメリカ北部の熱帯雨林に生息する樹上性の動物です(スミソニアン国立動物園)。スミソニアン国立動物園は、フタユビナマケモノが日中に約15時間眠ると説明しています。一方、野生のミユビナマケモノ(Bradypus variegatus)3頭の脳波を測った2008年の研究では、睡眠は1日あたり約9.6時間で、飼育下の報告より6時間以上短い結果でした(小規模な調査で、年齢などの影響は除外できないと著者は述べています)。起きているときも、ゆっくりと慎重に動きます(スミソニアン国立動物園)。
主な食事は葉・果実・新芽など植物性のもので、まれに幼虫などを食べることもあります(スミソニアン国立動物園)。特に葉は栄養価が低く、食べ物が消化管に約1か月とどまるほど消化に時間がかかります。この食事から得られるエネルギーが限られるため、動きを抑えて消費を節約していると考えられています。
省エネ生存戦略の詳細
ナマケモノの「動かない」という行動は、いくつかの理由が重なっています。
1. エネルギー節約
葉からは得られるエネルギーが限られています。スミソニアン国立動物園によると、フタユビナマケモノの代謝率は体重から期待される値の40〜45%ほどで、体温は30〜34℃程度で変動します。ミユビナマケモノ8頭の酸素消費量を周囲の温度ごとに測った研究では、温度が上がると酸素消費量が増え、ある範囲で頭打ちになり、さらに高温で下がるという、通常の恒温動物と異なる反応が報告されています(Cliffeら、2018年)。
2. 捕食者からの回避
動かないことで、視覚的に見つかりにくくなります。ナマケモノの毛の溝には青緑色の藻が生え、緑がかった色が樹冠で身を隠すのに役立つと説明されています。丸まった姿勢はシロアリの巣や木の節にも似ています(スミソニアン国立動物園)。
温度と食べる量の関係
ミユビナマケモノの胃は常に食べ物で満たされており、食べ物が胃から出てはじめて追加で食べられると、Cliffeらは説明しています。飼育下のミユビナマケモノ3頭を5か月観察した研究(2015年)では、周囲の温度が高い日ほどよく食べたと報告されています。著者らは、体温が周囲の温度に左右されることで、食べ物を処理する微生物の発酵の速さが変わる可能性を提案しています。
ただし、これは飼育下3頭の観察であり、寒さによる餓死を調べた研究ではありません。
また、フタユビナマケモノは震えて体を温めることができず、日なたと日陰を移動して体温を調節します(スミソニアン国立動物園)。
水分補給の方法
フタユビナマケモノはほとんど地上に降りません。水分は食べる葉の水分や露から補給します。食べ物が体内に留まる時間は約1か月に及ぶとされます(スミソニアン国立動物園)。
地上に降りる数少ない機会のひとつが、週1回程度の排泄です。木の根元の決まった場所で行います(同)。
よくある誤解
「ナマケモノは怠けているのではなく、生存に最適化している」
ナマケモノの動きの遅さには、エネルギーを節約する意味があると考えられています。動かないこと・緑がかった毛・低い体温や代謝は、低栄養の葉で熱帯雨林を生き抜くための特徴と考えられています。
まとめ
ナマケモノは日中に長く眠り、ゆっくり動く生活を送りますが、その背景には省エネ・擬態・体温調節という特徴があると考えられています。毛に藻が生えて緑がかる様子や、温度と食べる量の関係も、この生き方とつながっています。「怠惰」は見た目の話で、実態は低栄養の葉で生きるための特徴です。
よくある質問
Q. ナマケモノは泳げますか? A. はい。スミソニアン国立動物園は、フタユビナマケモノは地上ではほとんど動けないものの、泳ぎは意外と上手だと説明しています。
参考資料・出典
- Smithsonian's National Zoo「Two-toed sloth」(フタユビナマケモノ):睡眠、代謝、毛の藻、体温調節、排泄、泳ぎの説明。
- Cliffe, R. N. et al. (2018)「The metabolic response of the Bradypus sloth to temperature」PeerJ:ミユビナマケモノ8頭の酸素消費量と周囲温度の関係(全文を確認)。
- Rattenborg, N. C. et al. (2008)「Sleeping outside the box: electroencephalographic measures of sleep in sloths inhabiting a rainforest」Biology Letters:野生のミユビナマケモノ3頭の脳波による睡眠(約9.63時間)。要旨で確認(本文は未確認)。
- Cliffe, R. N. et al. (2015)「Sloths like it hot: ambient temperature modulates food intake in the brown-throated sloth (Bradypus variegatus)」PeerJ:飼育下のミユビナマケモノ3頭・5か月の観察。温度と採食量の関係(全文を確認)。
