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カラスは人の顔を覚える?実験と暮らしの対策を分けて読む

カラスの顔の識別を調べた野外実験と、危険・世話をする人への脳の反応を調べた研究を紹介します。対象の種と測定条件を分け、日本の身近なカラスへの対応は自治体の案内から整理します。

カラスは人の顔を覚える?実験と暮らしの対策を分けて読む

この記事でわかること

  • 人の顔の識別は、アメリカガラスを対象に仮面を使った野外実験で調べられた
  • 長期間の集団の反応と、一羽ごとの記憶の持続は同じ測定ではない
  • カラスの知能を人間の年齢へ一律に換算することはできない

アイキャッチはカラスの学習を表すイメージで、以下の顔の識別実験を撮影した写真ではありません。

「賢いカラス」を測れる問いに分ける

カラスが人を見分ける、食べ物を取り出す、周囲の様子を学ぶ。こうした行動をまとめて「人間の何歳くらい」と言いたくなりますが、異なる能力を一つの年齢に換算することはできません。

ここでは、人の顔を識別できるかという具体的な問いに絞り、野外実験と脳の研究が何を測ったのかを見ていきます。研究対象のアメリカガラスと、日本でよく見るカラスを区別することも必要です。

仮面を使って「顔」と「人」を分けた実験

Marzluffらの2010年の研究では、米国シアトル周辺の五つの場所でアメリカガラスを捕獲する際、作業者が特定の仮面を着けました。その後、捕獲時の仮面と、それとは異なる仮面に対するカラスの反応を比較しました。

仮面を使うと、同じ顔を違う人が着けたり、服装などが違う状況で反応を調べたりできます。単に「いつも同じ人に鳴く」と観察するより、顔の見た目と他の手がかりを分けて調べやすくなります。

研究は、捕獲時の仮面に対する警戒の鳴き声などの反応を報告しています。大学構内の調査地点では、捕獲から2.7年後まで反応が追跡されました。

ただし、この期間は全ての調査地点・全ての個体を同じように追った期間ではありません。周囲のカラスを含む反応と、捕獲された一羽が何年間覚えていたかも区別が必要です。

脳の反応を調べた研究の条件

ワシントン大学の2012年の研究紹介では、12羽の成鳥の雄のアメリカガラスを対象に、捕獲時の仮面と、餌を与え世話をするときの仮面を使った研究が説明されています。

研究では、仮面を見せた後の脳の活動をPET画像で調べ、脅威や世話と結び付いた顔に対して異なる反応が見られたと紹介しています。これは、顔が過去の経験と結び付いて処理されることを考える材料です。

一方、人と似た役割の脳領域が反応したという説明から、カラスが人と同じ感情や言葉で考えているとは結論づけられません。家の近くの一羽が自分をどう認識しているかを、この研究だけで判定することもできません。

研究結果を読むときの三つの区別

区別なぜ必要か
種アメリカガラスの実験を、日本の全てのカラスにそのまま当てはめられない
測定した能力顔の識別と、道具の使用や将来の計画は別の問い
個体と集団その場の複数のカラスの反応と、一羽の記憶は同じ測定ではない

この区別を保つと、「顔を識別した」という具体的な結果を、人間の知能全体との比較へ広げずに理解できます。道具を使う別の種の研究も、その種と課題を確認して読む必要があります。

身近なカラスへの対応は、自治体の案内で考える

研究の実験を確かめるために、カラスへ近づいたり、仮面を着けて反応を試したりする必要はありません。

札幌市の案内は、繁殖期の巣の近くでの威嚇に注意し、鳴いて警戒されたら迂回するなどして近づかない対応を示しています。同市の案内にある4〜7月という時期は、地域の案内として読む必要があります。

ごみへの被害について、名古屋市は、生ごみを外から見えにくくすることや、袋全体を防鳥ネットで覆い、隙間をなくすことを案内しています。集積所の出し方や時刻は、住んでいる地域のルールを確認します。

ここでの対策は、顔を忘れさせる方法ではありません。巣との距離や、ごみに近づける条件を変える、生活上の対応です。

よくある質問

Q. カラスは人間の5歳や8歳と同じ知能ですか?

そのように一律には比較できません。顔の識別を調べた結果から、年齢相当の知能全体を計算することはできません。

Q. 一度威嚇されたら、ずっと狙われますか?

身近な個体について、そのように予測することはできません。繁殖期の巣への接近など、周囲の状況を確認し、安全な距離を取る対応を考えます。

参考資料・出典